プロフィール帳

『水無瀬三吟百韻』

時代:室町

作者:宗祇・肖柏・宗長

概要:連歌の最高峰ともいえる句集

8

オススメ度

5

日探重要度

2

文量

4

読解難易度

 

解説

水無瀬三吟百韻とは

水無瀬三吟百韻(みなせさんぎんひゃくいん)は、室町時代後期に作られた連歌で、連歌が完成された芸術のひとつとして世に知らしめた作品です。成立は文明13年(1481)になります。

水無瀬とは

詠まれた場所は、山城国にある水無瀬宮跡(現在の大阪府島本町)です。この水無瀬宮は、後鳥羽上皇が居住していた宮殿で、室町時代後期の段階で既に跡地となっていました。

後鳥羽上皇は『新古今和歌集』を主導した人物で、中世和歌界の精神的な方針を確立しました。後述しますが、これに列席した飯尾宗祇は後鳥羽上皇を神格化しており、そのため、和歌の正統は後鳥羽上皇の宮殿に継がれていると考えたのです。

三吟とは

三名が吟じたため、「三吟」です。飯尾宗祇(そうぎ)、肖柏(しょうはく)、宗長(そうちょう)の三名で、当時随一の連歌師が一堂に会しました。なお、肖柏と宗長に名字はありません。

基本的に、宗祇→肖柏→宗長の順で詠まれます。

百韻とは

「百韻」とは、発句・脇句・第三句以下を連ねて全百句とする連歌の正式な形式のひとつです。

三人の歌風

三人はそれぞれの美意識を持って名を馳せました。その三人が上の句、下の句を分担して一つの和歌を作り上げるので、各々が高めた芸術性がさらに昇華されることとなったのです。

飯尾宗祇の歌風

歌全体の調和を重視

飯尾宗祇は、全体構成と歌の品位を重要視しました。派手な表現を避け、余情の含みを引き出したのです。余情は、和歌全体の文法や表現のバランスが取れていないと生まれるものであるため、飯尾宗祇は文法的な調和が和歌の根本義だと考えていたといえましょう。また、余情は新古今和歌の理念でもあるため、後鳥羽上皇の歌風が飯尾宗祇に移植されたことも特徴です

肖柏の歌風

先代を踏襲

三人の中で最も理知的で学問的な歌風をもっています。肖柏は連歌のみならず、漢詩文や和歌、仏典に精通しており、典拠を踏まえた歌が多いのが特徴です。

そのため、歌の意味が明確で、破綻がありません。連歌では、前句の語を理詰めで受け、理詰めで句の方針を定めるため、歌の意味が分かりやすいです。

宗長

人の心(感情)を最優先

三人の中で最も感情的な表現をします。他の二人は自然や時間など人間以外を主題とした句が多いですが、宗長は旅空や恋、孤独といった人間を主題にした表現が多いです。

そのため、言葉が平明で俗っぽいです。

一覧

No句番号者句
1初表八句宗祇雪なから山もとかすむ夕かな
2初表八句肖柏行水遠く梅にほふ里
3初表八句宗長河風に一むら柳春見えて
4初表八句祇舟さすおともしるきあけかた
5初表八句柏月やなおきり渡る夜に殘るらん
6初表八句長霜おく野はら秋は暮れけり
7初表八句祇鳴くむしの心ともなく草かれて
8初表八句柏かきねをとへはあらはなる道
9第5句長やまふかき里や嵐にをくるらん
10第5句祇なれぬすまゐそ寂しさもうき
11第6句柏今さらに獨有身を思ふなよ
12第6句長うつろはんとはかねてしらすや
13第7句祇おき侘る露こそ花に哀れなれ
14第7句柏また殘る日の打ちかすむ影
15第8句長暮ぬとやなきつゝ鳥の歸るらん
16第8句祇み山を行はわくそらもなし
17第9句柏はるゝまも袖は時雨の旅衣
18第9句長わか艸まくら月ややつさん
19第10句祇徒にあかす夜おほく秋ふけて
20第10句柏夢にうらむる荻のうは風
21第11句長みしはみな故郷人のあともなし
22第11句祇老のゆくへよなにゝかゝらむ
23第12句柏色もなきことの葉をたに哀しれ
24第12句祇それもともなる夕くれのそら
25第13句長雲にけふ花ちりはつるみねこえて
26第13句柏きけは今はの春のかりかね
27第14句祇おほろけの月かは人もまてしはし
28第14句長かりねの露の秋のあけほの
29第15句柏末野なる里ははるかに霧立て
30第15句祇吹くる風はころもうつこゑ
31第16句長さゆる日も身はそてうすき暮毎に
32第16句柏たのむもはかな爪木とる山
33第17句祇さりともの此世の道はつき果て
34第17句長こゝろほそしやいつちゆかまし
35第18句柏命のみ待ことにするきぬゝゝに
36第18句祇猶何なれや人の戀しき
37第19句長君をおきてあかすも誰を思ふらん
38第19句柏その面影に似たるたになし
39第20句祇草木さへふるき都のうらみにて
40第20句長身のうきやとも名殘こそあれ
41第21句柏たらちねの遠からぬ跡になくさめよ
42第21句祇月日のすゑや夢にめくらん
43第22句長この岸を唐舟のかきりにて
44第22句柏又生れ来ぬ法を聞かはや
45第23句祇あふまてと思の露のきえかへり
46第23句長身をあき風も人たのめなり
47第24句柏松むしのなく音かひなき蓬生に
48第24句祇しめゆふ山は月のみそすむ
49第25句長鐘に我たゝあらましのね覺して
50第25句柏いたゝきけりな夜なゝゝの霜
51第26句祇ふゆかれの芦零侘て立る江に
52第26句柏夕しほかせを沖つ舟人
53第27句長ゆくゑなき霞やいつく果てならん
54第27句祇くるかた見えぬ山里の春
55第28句柏茂みよりたえゝゝ殘る花おちて
56第28句長木のもと分るみちの露けさ
57第29句祇秋はなともらぬ岩屋もしくるらん
58第29句柏苔の袂も月はふけけり
59第30句長心あるかきりそしるき世捨人
60第30句祇おさまるなみに舟いつるみゆ
61第31句柏朝なきの空にあとなき夜の雲
62第31句長ゆきにさやけき四方の遠やま
63第32句祇嶺のいほ木のはの後も住みあかて
64第32句柏さひしさそふる松風の聲
65第33句長誰かこの暁おきをかさねまし
66第33句祇月はしるやの旅そかなしき
67第34句柏露ふかみ霜さへしほる秋の袖
68第34句長うすはなすゝきちらまくもをし
69第35句祇鶉なくかた山くれて寒き日に
70第35句柏野となる里もわひつゝそすむ
71第36句長帰りこは待し思ひを人やみん
72第36句祇うときも誰か心なるへき
73第37句柏昔よりたゝあやにくの戀のみち
74第37句長忘られかたき世さへうらめし
75第38句祇山かつになと春秋のしらるらん
76第38句柏うへぬ草葉のしけき柴の戸
77第39句長かたはらに垣ほのあら田かへしすて
78第39句祇行人かすむあめのくれかた
79第40句長やとりせん野を鶯やいとふらん
80第40句柏小夜もしつかにさくらさくかけ
81第41句祇灯をそむくる花にあけそめて
82第41句長たか手まくらに夢はみえけん
83第42句柏ちきらはやおもひ絶えつゝ年もへぬ
84第42句祇今はのよはひ山もたつねし
85第43句長かくす身を人はなきにもなしつらん
86第43句柏さてもうき世にかゝる玉の緒
87第44句祇松の葉をたゝ朝夕のけふりにて
88第44句長うらはの里よいかにすむらん
89第45句柏秋風のあら磯枕ふしわひぬ
90第45句祇鴈なくやまの月ふくるそら
91第46句長小萩はら移ろふつゆも明日やみん
92第46句柏あたの大野をこゝろなる人
93第47句祇わするなよかりにやかはる夢うつゝ
94第47句長おもへはいつをいにしへにせん
95第48句柏佛たちかくれては又いつる世に
96第48句祇かれし林もはるかせそふく
97第49句長山はけさいく霜よにかかすむらん
98第49句柏けふりのとかにみゆるかりいほ
99第50句祇いやしきも身をおさむるは有つへし
100第50句長人におしなへ道そたゝしき

 

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