第21~40条
第二十一条
一すいきやうに人をころす事、申むねありとも、さいくわにしよすへし、人をきり、又ハちやうちやくする事、とうさいたるへき也、
酔狂(酒に酔って)になって人を殺した場合、申し開くことがあったとしても、罪科に処す。人を斬ったり、打擲(ちょうちゃく。殴ること)する行為も同罪である。
第二十二条
一さかゑひ人をはうこんする事、時宜によるへし、ねうはうしゆつけ・とうせん、
酒酔い人を謗言(ぼうごん。誹謗中傷)することについては、その時宜による。酔って女房を家から追い出したり、女性が酔って出家しようとしたりした場合は、同前である。
第二十三条
一とかにんをうつのとき、ひゝきのやから、いかほとうちそへ候とも、うたれたる者のふうんたるへし、たゝしにんたいととうたう候ハゝ、そのはをのかし、ひろういたし、下知相待へきなり、
罪人を討つ時、贔屓している輩がどれだけ討つのに加担したとしても、討たれた者の不運とすべきである。ただし、生き残った場合には、その刃を残し、披露(届け出)して、下知を待つべきである。
第二十四条
一おやこ兄弟のかたきたり・とも、ミたりにうつへからす、たゝしくたんのてきにん、せいはいをハつてのゝち、はいりやう中へはいくわひのとき、むて人はしりあひ、おやのかたきといひ、このかたきといひ、うつ事をつと有へからさる也、
親子兄弟の仇であっても、みだりに討ってはならない。
また、前述の敵人が成敗を受けた後、配流となって目的地まで徘徊している所に、むて人(武装していない者)同士が走り合って、「親の仇だ」とか「この者は仇だ」とか言って討たれるようなことはあってはならない。
第二十五条
一おやこのとか、たかひにかくるやいなやの事、右、あるいはたうさのけんくわにより、あるひハしゆゑんのすいきやうにより、ふりよのほかに人をころすにおゐてハ、その身をせいはいをくわへ、しよたいをけつしよすとも、そのちゝ、そのこあひましハらすハ、たかひにこれをかけへからす、人をきるとかの事も、これにしゆんすへし、つきにあるいハこ、あるひハまこ、おほちおやのあたをころすにおゐてハ、おやおほちたとひあひしらすといふとも、とうさいたるへし、おやおほちのいきとをりをとけんため、たちまちかいしんをくわたつるのゆへ也、もし又人のしよたいをうはハんとし、もしハ人のさいほうをとらんとして、人をころすのとき、其ちゝしらさるのよし申事まきれなくハ、其つミにしよすへからさる也、[付たり、きやうたいのとか、たかひにこれにしゆんすへし、]
親子の罪を、いずれにも負わせるか否かのこと。喧嘩の現場に居合わせたり、酒宴で酔狂になって不慮にも他人を殺したりした場合は、その本人には成敗を加え、所帯を闕所(けっしょ。没収すること)する。
ただし、その本人父や子が関与していないのならば、彼らに同じ罪は負わせてはならない。同様の状況で人を斬って殺した場合も、これに準ずるものとする。
次。子または孫が大父親(祖父)の仇を殺した場合は、父や祖父がたとえ「知らなかった」と言っても、同罪とする。これは、父や祖父の憤りを遂げるために、殺す気はなくても害心が湧いてくるからである。
もし、人の所帯や財宝を奪おうとして人を殺した場合は、その父が「知らなかった」と申し立て、そのことに偽りがなければ、罪に処してはならない。
[付記。兄弟間の罪についても、これに準ずるものとする。]
第二十六条
一たりやうにてとかにんをうつとき、そのところの者、いらんにをよふ・事あるへからさる也、
多人数で罪人を討つとき、その場所にいる者は、濫りに関与することがないように。
第二十七条
一人のひくわん、本しうにんをすて、あらためしうをとる事あらは、いまめしつかふしうにんのかたへ申とゝけ候うへ、なをよくりういたし、本しうにんへかへさす候ハゝ、一ひつをとり、見あひにこれをうつへし、もし又ふミの返事にもをよはすハ、しさいをひろうすへし、其是非により、くたんのひくハん、ならひにきよよういたし候やから、ともにもつてせいはいをくわふへきなり、
人の被官(ひかん。家臣)が、もとの主人を捨てて主人を替えることがあった場合は、現在召し仕えている主人の側へ申し届けた上、その側に抑留すること。
もとの主人のもとへ戻らなかった場合は、一通の書状を取り交わし、双方立ち会いの上でこれを討つことができるものとする。
もし、書状に返答すらしない場合には、子細を披露(届け出)するべきである。その是非によって、この件の被官並びにこれを許容している者、共に成敗を加える。
第二十八条
一とまりきやくしんころさるゝ事、ていしゆのをつと也、たゝしうちてまきれなくハ、そのうへの時宜により、をつとあるへからさる也、
宿泊中の客人が何者かに殺された場合、それは亭主の越度である。ただし、討った者がはっきりしている場合は、それと時宜を考慮して、亭主の越度としないこともある。
第二十九条
一客人ときやくしんけんくわにをよひ、一はううたれ候ハゝ、ていしゆくたんのせつかいにんをからめをき、披露すへし、もし又そのきにをよはすハ、しんしやくいたし、事のよしを申分へき也、
客人と宿人が喧嘩に及び、一方が討たれた場合は、亭主は当該の殺害人を拘束し、披露(届け出)すべきである。もし、その機会を逃した場合は、斟酌(しんしゃく。事情をくみ取ること)し、事の次第を申し開くべきである。
喧嘩に及んだ二者の関係や、拘束できなかった状況を汲み取ることを言っています。
第三十条
一人のさい所のうちより、人をよひいたすのとき、よひいたされ候もの、そのまゝいつかたへもありき、やミうちにうたるゝ事あり、いせんよひいたし候ものゝ越渡たるへし、たゝしあやまりなきしせうあらは、さいくわにしよすへからす、
人の在所の中から人を呼び出した時、呼び出された者がそのままどこかへ立ち去り、そのまま夜討ちに遭って殺されることがあった場合は、最初に呼び出した者の越度である。
ただし、過失がないことを示す支証がある場合は、罪科に処してはならない。
裁判官が罪人を家から呼び出したけど、逃げ出して、そのまま殺された、といった状況です。保護監督違反みたいな感じでしょうか。
第三十一条
一人のかたへよはれ、そのところよりかへりの道にて、やミうち
にうたるゝ事あらは、いせんのよひてのやくとして、せつかいに
んのしせう相尋へき也
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人のもとへ呼ばれ、そこからの帰路で夜討ちに遭って殺された場合は、
呼んだ者の厄(責任)として、呼んだ者が殺害人の支証(情報)を追及すべきである。
第三十二条
一人のつかいとして、人をよひいたし候とき、相たのミ候人、いまよひいたす人をうちちくてんのうへ、かのつかいにたのまれ候もの、こんほんのしさいをしらすといふとも、とうさいたるへし、せつかいにんに、くミするのゆへなり、たゝしこれをしらさるしせうまきれなくハ、其とかをのかすへし、
人の使いとして、ある人を呼び出す場合について。依頼した人が、その呼び出した人を討ち、逐電した場合、その使者に依頼された者(使い)は、根本の子細事情を知らなかったと主張しても、同罪である。
これは、殺害人に与みしたことになるからである。ただし、これを知らなかったことを示す支証が明白にあるならば、その罪は免除する。
第三十三条
一たこくのあきんと、しゆきやうしやころさるゝ事あらハ、さい
くわにいたつてハ、そのむらさとにあひとまるへきなり、たゝし
かのかうなひのもの一人なりとも、くたんのとかにんを申いて候
ハゝ、そのむら中のあんとたるへき也、
他国の商人や修行者が殺害されることがあり、罪科に及ぶことになれば、
その村里全体が連帯して責任を負うべきである。
ただし、その郷内からこの件の咎を受ける人を一人でも申し出た場合には、
その村中の連帯責任は安堵(免除)とする。
第三十四条
一しかいの事、たいもくを申をきしに候ハゝ、ゆいこんのかたき、せいはいをくわふへきなり、いしゆを申をかすハ、せひにをよふへからす、たゝししきによるへき也、
自害について。題目(遺書)を残して死んだ場合、遺言の仇として、その者に成敗を加えるべきである。
異種(遺言と異なる内容、遺書の内容は嘘、誤解)だと申し立てたとしても、争うまでもない。書いてることが真である。ただし、時宜によるか。
第三十五条
一人ちかいいたしうち候事、さいくわたるへし、しかるにもしうたれ候もの、あるひハぬす人と申いつハり、あるひハとかにんのよし申のかるゝといふとも、そのものいきたるうちに、りひをひろういたさす、すてにせつかいせしむるのうへハ、りひをたゝすにをよハす、せいはいをくわふへきなり、
人違いで討ったら、それは罪科に当たる。もし、この事案が来た場合について。
討った人が、「実は盗人で。」と偽って申し立てたり、「実は咎人で。」と称して罪を逃れようとしたとしても、討つ正当性を、討たれた人が生きているうちに明らかにできなかったら、つまりすでに死んでしまっていたら、正当性を糾明するまでもなく、成敗を加えるものとする。
第三十六条
一くひちかいの事、とくをのミ、くい、しぬるうへハ、其ていしゆの越度たるへし、たゝしくすりのまことハつハり、いまたさたまらさるにいたつてハ、しきによりつミのふかきあさき有へきなり、
食い違いについて。毒を飲んだり、食べたりして死んだ場合は、その亭主の越度である。
ただし、薬か毒かの真偽が明らかでない場合は、時宜によって、罪の重軽を決めること。
第三十七条
一とかにんかくこのさいしよへ申とゝけすして、これをうつへからす、もし申とゝくるのうへ、せういんにたさす、しゐてかくこ候ハゝ、しさいをひろうせしめ、そのさいしよをさかすへきなり、
咎人が匿われている場合について。討つ者は、届け出を出さずに討ってはならない。届け出を出して承引(納得した上で承諾すること)が降りない場合もあるが、そのような届け出があってもなお、しぶとく隠れているのなら、裁判所は、その詳細を調査し、居場所を探すべきである。
第三十八条
一けんくわこうろんにより、人をきる事ハ、ておいおほきかたのりうたるへし、たゝしておいしにんおほくとも、かゝり候ハゝ、かゝりてのをつとたるへき也、
喧嘩や口論によって人を斬る事案について。これは、手負い(負傷者)が多い方に理運があると判断すべきである。
ただし、負いや死人の人数が多くても、先に襲い掛かったのなら、手負い側の責任である。
第三十九条
一人をきるとかの事、ひろうのうへ、せいはいをまつへきのところに、其儀にをよはす、わたくしにきりかへしすへからす、かくのことくのともから、たといしこくのりうんたりとも、はつとをそむき候うへ、・せいはいをくわふへきなり、
人を斬った咎について。披露のうえで成敗を待つところであるが、この形式に従わないで、私的に斬り返してはならない。
このような輩は、たとえ至極真当な理運があったとしても、法度に背いた以上、成敗を加えるものとする。
第四十条
一人をちやうちやくする事、さふらゐにおゐてハ、しよたいをとりはなすへし、むそくのやからハ、たこくへをいはらふへし、しかるにせいはいをまたす、しふんとしてうちかへしする事有へからす、しかのこときのやから、しよたいをめしあけへし、むそくのともからハ、たこくへおいはらふへきなり、
人を打擲することについて。侍においては、所帯を取り離すこと。無足(所帯を持たない者)の輩は、他国へ追放すること。
つまり、成敗を待たずに、私的に討ち返すことがあってはならないということである。そのような輩は、所帯を没収し、無足の輩は、他国へ追放するべきである。












