プロフィール帳

『奥の細道』

時代:江戸

作者:松尾芭蕉

概要:自然や歴史、人の営みの美しさを見出した、東北・北陸を巡る紀行文学

9

オススメ度

7

日探重要度

5

文量

5

読解難易度

 

登場する場所

番号と対応した地図です。東北地方の名所は頻繁に立ち寄っていることが分かります。

19『宮城野』では、

38 名取川

39 仙台宿舎

40 榴ヶ岡

41 木の下薬師堂

42 榴岡八幡宮

が該当します。

原文

名取川を渡て仙台に入

あやめふく日也

旅宿をもとめて四五日逗留す

爰に画工加右衛門と云ものあり

聊心ある者と聞て知る人になる

この者年比さだかならぬ名どころを考置侍れば

とて一日案内す

宮城野の萩茂りあひて秋の景色思ひやらるる

玉田よこ野つつじが岡はあせび咲ころ也

日影ももらぬ松の林に入て

爰を木の下と云

とぞ

昔もかく露ふかければこそ

みさぶらひみかさ

とはよみたれ薬師堂天神の御社など拝て其日はくれぬ

猶松島塩がまの所々画に書て送る

且紺の染緒つけたる草鞋二足餞す

さればこそ風流のしれもの爰に至りて其実を顕す

あやめ草 足に結ん 草鞋の緒

現代語訳

名取川を渡って仙台(奥州街道第七十番目の宿)に入った。

今日は菖蒲を葺く日(端午の節句つまり5月5日)である。

旅宿を求めて四、五日逗留することにした。

ここに、北野加右衛門という画工(絵師のこと)がいた。

いささか風流心ある者と聞いて親しくなった。

この者が、

「数年来、はっきりしていない名所を調べておりましてね。」

と、一つずつ案内してくれた。

宮城野の萩が生い茂り、秋の景色が偲ばれた。

玉田、横野、榴ヶ岡(つつじがおか)は、馬酔木(あしび)が咲く時期である。

とらちゃ
とらちゃ

源俊頼『散木奇歌集』

『とりつなげ 玉田横野の 放れ駒 つつじが岡に あせみ咲くなり』

誰か、玉田横野で走り回っている馬を捕まえてくれ、榴ヶ岡には、馬酔木の花が咲いているから、酔って使い物にならなくなってしまうよ。

日影も差さないほどの深い松林に入って、

「ここを木の下といいます。」

と言う。

とらちゃ
とらちゃ

木の下は、宮城野にある叢林の名前です。

『御侍~』と詠まれているくらいだから、昔もこのように露深かったのだろう。

とらちゃ
とらちゃ

『古今和歌集』「東歌」

『御侍 御笠と申せ 宮城野の 木の下露は 雨にまされり』

お侍様。ご主人に「御笠をどうぞ。」と申し上げてください。宮城野の木の下の露は、雨より濡れますから。

木の下薬師堂や榴ヶ岡天満宮などを拝んで、その日は暮れた。

そして、北野加右衛門に、松島、塩釜の地図を絵に描いて私にくれた。

さらに、紺の染緒を付けた草鞋二足を餞別にくれた。

これぞ風流人、その極致を見た。

菖蒲草 足に結ばん 草鞋の緒

端午の節句だから家々は菖蒲を葺いているが、私は草鞋の緒にしよう。

とらちゃ
とらちゃ

端午の節句に菖蒲を葺くのは、邪気を払うという意味合いがあります。芭蕉は、草鞋として、旅の息災を祈りました。

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