プロフィール帳

『ポツダム宣言』

時代:昭和

連名:英・米・中首脳

概要:13条の宣言。後日、ソ連も連名に加わった。8月14日に受諾、9月2日発行

10

オススメ度

10

日探重要度

3

文量

2

読解難易度

 

解説

『ポツダム宣言』は、第二次世界大戦末期の1945年(昭和20年)7月26日に、アメリカ・イギリス・中国の3か国が日本に対して発表した、日本の降伏条件を示した共同声明です。

正式には『日本国に対する米、英、支那三国宣言』と呼ばれます。

なぜ本土征服を選ばなかったのか

『ポツダム宣言』の最大のポイントは、日本の完全な武力制圧という選択肢があったにもかかわらず、無条件降伏を促した点にあります。それはなぜでしょうか。

ダウンフォール作戦

実際、連合国側には、日本本土を軍事的に攻撃して、徹底的に占領するという選択肢も実際にありました。

仮に無条件降伏を受諾しなかった場合に実行するはずだった、「ダウンフォール作戦」と呼ばれる日本攻略構想です。

それでも、無条件降伏を求めたのは、単に「日本を完全に滅ぼす」ことが目的だったわけではないからでした。

先に「宣言」を出した理由

ダウンフォール作戦の実行の前に、『ポツダム宣言』を提示したのは、軍事的な側面がありました。

7月時点で、沖縄、硫黄島と、日本の防衛拠点を占領していましたが、連合国側は想定以上の時間と犠牲を出していました。

日本軍は、集団戦における異常な粘り強さを発揮するだけでなく、神風特攻隊や、民間人による戦車への肉弾特攻など、狂気ともいえる作戦を実行する、狂気の民族としての認知が連合国側で広まっていました。

この勢力のまま本土決戦に乗り込めば、双方どれだけの人員、時間、軍事費が必要となるか想像もつきません。

日本としても、本土決戦における総玉砕を本気で実行する計画もあったため、連合国側としても、本土決戦は避けたいところでした。

そのため、連合国側、特にアメリカによる、日本の対東アジア軍事拠点化が立案され、「最後通告」として『ポツダム宣言』が出されたわけです。

ポツダム宣言の内容

『ポツダム宣言』とは、「ここで降伏すれば、これ以上の破壊や戦闘を避けて戦争を終わらせることができる。降伏しなければ・・・」

という、圧力をかけたうえでの降伏の道を日本に示したものでもあります。

そのため、可能な限り、降伏するような条件が盛り込まれています。

  • 第5条:日本の軍事勢力を除去することを求める
  • 第12条:一定の条件を満たせば、日本の産業を維持して経済を再建することも認める

日本の軍事的抵抗を終わらせる
↓
軍国主義を除去する
↓
日本を占領・管理する
↓
最終的には日本を平和的な国家として復興させる

宣言は、穏便な解決ではない

ポツダム宣言には、

日本国軍隊の完全な壊滅

という非常に厳しい表現があります。

そして最後には、日本が降伏しなければ、

迅速かつ完全なる壊滅を受けることになる

と警告しています。

「攻撃する代わりに話し合いをした」というより、「本土侵攻などの軍事的選択肢が残っていることを示し、降伏する機会を提示した」と考える方が正確です。

そして、日本が受諾しなければ、先ほど説明した「ダウンフォール作戦」をはじめ、実際に軍事攻撃を続ける予定でした。

実は原爆投下より前に提示されていた

原爆投下後に『ポツダム宣言』を受諾したのは、よく知られていることですが、実は、原爆投下より前から無条件降伏を提示されていたのは、あまり知られていません。

日本がすぐ受諾しなかったため、本土への攻撃をもって、圧力をかけていきます。

日本政府は当初、ポツダム宣言に対して明確な回答を出しませんでした。7月28日、鈴木貫太郎首相が記者会見で「黙殺する」と発言したことが海外に伝わり、連合国側はこれを宣言を拒否したものとして受け取りました。しかし、「黙殺」という言葉には「コメントを控える」という意味であったともされ、当時の日本政府がどのような意図で使用したのかについては議論が続いています。

  • 6/23
    沖縄戦終結
  • 7/26
    『ポツダム宣言』発表
  • 7/28
    日本政府が「黙殺」を選択
  • 8/6
    広島へ原爆投下
  • 8/8
    ソ連が対日参戦
  • 8/9
    長崎へ原爆投下
  • 8/14
    『ポツダム宣言』受諾
  • 8/15
    『玉音放送』発表
  • 9/2
    ミズーリ号にて調印

その後、8月6日にアメリカが広島へ原子爆弾を投下し、8月8日にはソ連が日本に宣戦布告して満州へ侵攻しました。そして8月9日には長崎にも原子爆弾が投下されます。

こうした状況の中、日本政府はポツダム宣言を受諾する方向へ進み、8月14日に受諾を決定。翌8月15日、昭和天皇による玉音放送が行われ、国民に終戦が伝えられました。正式な降伏文書は9月2日に東京湾上の戦艦ミズーリで調印されています。

沖縄戦が終結した時点で『ポツダム宣言』を受諾していれば、原爆投下は避けられたかもしれません。

『ポツダム宣言』の内容

『ポツダム宣言』は全13条構成です。

その中では、

  • 日本が戦争を続けるなら「日本国軍隊の完全な壊滅」という結果に直面すること(第6条)
  • 日本の主権を本州・北海道・九州・四国と連合国が決定する諸小島に限定すること(第8条)
  • 日本の軍国主義を取り除き、戦争を始めた責任者を処罰すること(第10条)
  • 軍事産業を制限すること(第11条)

などが示されました。

一方で、

  • 日本国民を奴隷化したり、日本という国家を完全に消滅させたりすることを目的としていない(第10条)

と、国家として保障することも示されています。

日本が戦争を続けるなら軍事的に徹底して攻撃する。しかし、ここで降伏するなら戦争を終わらせ、日本を平和国家として再建する道を与える

という内容であり、「日本国民そのものを滅ぼす」ことと「日本の軍事力・軍国主義を排除する」ことが区別されていたという点が重要でしょう。

現代語訳

(1) We– the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our country-men, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.

(2) The prodigious land, sea and air forces of the United States, the British Empire and of China, many times reinforced by their armies and air fleets from the west, are poised to strike the final blows upon Japan. This military power is sustained and inspired by the determination of all the Allied Nations to prosecute the war against Japan until she ceases to resist.

(3) The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the re-sisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and com-plete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter destruction devastation of the Japanese homeland.

(4) The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintel-ligent calculations have brought the Empire of Japan to the Threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.

(5) Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.

(6) There must be eliminated for all time the authority and influ-ence of those who have deceived and misled the people of Japan into em-barking on world conquest, for we insist that a new order of peace, secur-ity and justice will be impossible until irresponsible militarism is driven from the world.

(7) Until such a new order is established and until there is convinc-ing proof that Japan’s war-making power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.

(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Jap-anese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.

(9) The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.

(10) We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation, but stern justice shall be meted out to all war criminals, including those who have visited cruelties upon our prisoners. The Japanese government shall remove all obstacles to the revival and strengthening of democratic tendencies among the Japanese people. Freedom of democratic ten speech, of religion, and of thought, as well as respect for the fundamental human rights shall be established.

(11) Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those industries which would enable her to re-arm for war. To this end, ac-cess to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese participation in world trade relations shall be permitted.

(12) The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been estab-lished in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.

(13) We call upon the government of Japan to proclaim now the uncondi-tional surrender of all the Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The alternative for Japan is prompt and utter destruction.

第1条

我々は、アメリカ合衆国の大統領、中華民国の国家主席、そしてイギリスの首相である

我々の数億人の国民を代表して協議し、日本に対してこの戦争を終結させる機会を与えることに同意した。

第2条

アメリカ合衆国、イギリス、そして中国の有する膨大な陸海空軍は、西からの軍隊と空軍によって繰り返し補強されており、日本に最後の一撃を加える態勢にある。

この軍事力は、全連合国が対日戦争を継続する意志によって生み出されたものであり、同時に全連合国を鼓舞している。

そして、この軍事力は日本が抵抗する限り維持される。

第3条

世界の自由な民衆の力に対して向けられたドイツの抵抗は無駄で無意味なものであった。

このドイツの行動が日本国民の行動規範として示されていることは非常に明瞭である。

現在、日本に集中する力は、かつて世界に抵抗したナチスに向けられた力よりも遥かに大きいものである。

ドイツのこの行動は必然的に国内の土地、産業、生活方法を荒廃さた。

我々が戦うことを決意し、軍事力を全面的に活用すれば、日本の軍事力は不可避かつ完全なまでに破壊されることとなるだろう。

これはまた、日本国そのものの徹底的な破壊が不可避であることを意味している。

第4条

日本は、無分別な政道によって大日本帝国を滅亡の淵に追いやった。

この原因である軍国主義的な指導者たちに支配され続けるのか、それとも理性的な道を歩むのか、決断が迫られている。

第5条

以下は我々が提示する条件である。この条件を外すことはない。また代替案はない。そして、我々は遅れを許さない。

第6条

我々は、日本国民を欺き、世界征服への政道を開いた人々の権威と影響を、永久に排除しなければならない。

なぜなら、無責任な軍国主義が世界から駆逐されるないかぎり、平和、安全、そして正義に基づく新しい秩序の実現が不可能だからである。

第7条

新しい秩序が確立され、日本の戦争能力が破壊されたという説得力のある証拠が得られるまで、連合国が指定した日本の地点は占領されるものとする。

これは、ここに掲げる基本目標の達成を確保が目的である。

第8条

カイロ宣言の条項は効力を持つ。

日本の主権は本州、北海道、九州、四国、及び我々が決定する島々に限定されるものとする。

第9条

日本軍は、完全に武装解除した後、平和で生産的な生活を送る機会を得ることができる。

そうして、故郷に帰ることが許されるものとする。

第10条

我々は、日本人を奴隷にするつもりはなく、国家として滅亡させるつもりもない。

しかし、我々の捕虜に残虐な行為を行った者を含め、全ての戦争犯罪者には厳正な裁きを下さなければならない。

日本政府は、日本人の生活に民主的傾向を復活、強化に向かう必要があり、発生する障害はすべて排除しなければならない。

言論、宗教、思想の自由、及び基本的人権の尊重は、確立されなければならない。

第11条

日本は、経済を維持することができる。

公的賠償を種々の形で提供する必要があるため、それを実行するために産業を維持することが認められるのだ。

しかし、再軍備を可能にする産業は含まれない。

産業の維持のため、原材料は制御なく使用できる。

最終的には、日本の世界貿易関係への参加が許可される。

第12条

連合国の占領軍は、以下の3点が達成された場合に日本から撤退する。

1、上記の目的が達成された場合

2、日本国民の自由な意思に基づいて平和を求めてた場合

3、平和に傾斜した、責任ある政府が樹立された場合

第13条

我々は日本政府に対して、日本軍の無条件降伏の即時宣言、また、平和的行動に対する適切かつ十分な保証を提供するよう求める。

日本に与えられた選択肢は、軍事国家の迅速かつ完全な破壊である。

終わりに

ポツダム宣言は、日本に対して戦争の終結と降伏を求めた、第二次世界大戦の終盤における重要な宣言です。

日本が受け入れなければ、連合国は日本本土への侵攻も視野に入れていました。このような状況で、戦闘継続を選択した未来は、どのようになっていたのか、想像したくもありません。

ポツダム宣言は、単なる「日本への降伏要求」ではなく、日本の軍事力を解体し、戦争を終わらせ、戦後の日本を再建していくための条件を示したものだったのです。

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