三善清行 平安
延喜4年(914年)に醍醐天皇に提出された政治意見書。平安末期の社会情勢と律令制の崩壊を知ることができる。
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現代語訳
諸国に勅命を出し、戸籍に則って口分田を班給することを望みます。
律令制の崩壊
恐れ多いながら諸国の大帳簿を拝見しましたところ、記載されている百姓は大半が所在不明の者でした。国司は誤った計帳に従って口分田を班給しているということです。
納税は、班田に応じて租を決め、調庸を徴収しています。戸籍が判明している者は僅かしかない田を耕し、大いに租や調を納めています。対して、所在が分からない者は、戸籍が一人であり、班田は荒廃しているため、決して耕すことができません。結果的に、租や調庸は遂に納められなくなりました。
公家の口分田というのは、調庸を納め、正税を献上するために存在します。しかし今、そのような口分田はついに献上を欠いている状態です。国司は無用な田の管理し、豪族はそれに加えて土地を所有しています。国の損害が深刻なだけではなく、役人の国内統治の妨げにもなっています。
意見申し上げる
今、諸国の戸籍を改めて調べ、正しく口分田を班給するべきです。残りの不明の田は、国司が公田として収公し、国司の判断で公田を民に売り払わせます。それで得られる地子を、納税していない所在不明な民の分として補填するのです。不明の田の利稲は、不動穀として非常用に保管します。
今まさに、百姓が納める調庸の納税数を三倍に増やすのです。国に利益が出るだけでなく、民の不安を取り除くことができましょう。
このことは全て国司が行うことであり、妨げがあってはならないのです。しかし、この政策は過去に例がありません。そのため、民の心が天皇のもとを離れることを恐れています。これが政策の障害になるかもしれないからです。
恐れながら希求します。いきなり施行するのではなく、諸国に勅命を出し、試しとして施行することを。
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単語帳
大帳 | 計帳のこと。大帳は計帳をもとに作られる(=参照して作られる)。閑寂人参照。 |
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沽却 | 売り払うこと |
地子(じし) | 公田の余りを貸し付けた際に納めさせた収穫量の五分の一の税。 |
不動穀 | 各国において非常用に備蓄された稲。 |