史料

讒謗律<現代語訳>原文を読めば讒謗の意味が分かる!

作品を知ろう!!!

板垣退助ら明治

明治年(1875)発布。

現代語訳

第一条

凡ソ事実ノ有無ヲ論セス人ノ栄誉ヲ害スヘキノ行事ヲ摘発公布スル者之ヲ讒毀トス

人ノ行事ヲ挙ルニ非スノ悪名ヲ以テ人ニ加ヘ公布スル者之ヲ誹謗トス著作文書若クハ画図肖像ヲ用ヒ展観シ若クハ発売シ若クハ貼示ノ人ヲ讒毀シ若クハ誹謗スル者ハ下ノ条別ニ従テ罪ヲ科ス

第一条。行為を摘発したり公表したりして、その人の栄誉を損ねた者は、その行為の事実の有無に関係なく、『讒毀』とする。

また、行為の内容を挙げず、ただ悪名を世間に広めた者は『誹謗』とする。著作文書や著作絵画、肖像画を用いて見せたり、発売や貼付によって広めたりといったような、人の讒毀と誹謗を働いた者は、以下に示す条に従って罰則を課す。

第二条

第一条ノ所為ヲ以テ乗輿ヲ犯スニ渉ル者ハ禁獄三月以上三年以下罰金五十円以上千円以下[二罰幷セ科シ或ハ偏ヘニ一罰ヲ科ス以下之ニ倣ヘ]

第二条。天皇に関して。第一条の理由をもって、天皇に対して謀る者は、禁錮三か月以上三年以下とし、罰金五十円以上千円以下とする。ただし、讒毀と誹謗の両方の罪を犯した場合は、いずれか片方の罰則を課す。これは以下の条項に倣う。

第三条

皇族ヲ犯スニ渉ル者ハ禁獄十五日以上二年半以下罰金十五円以上七百円以下

第三条。皇族に関して。皇族に対して謀る者は、禁錮十五日以上二年半以下とし、罰金十五円以上七百円以下とする。

第四条

官吏ノ職務ニ関シ讒毀スル者ハ禁獄十日以上二年以下罰金十円以上五百円以下誹謗スル者ハ禁獄五日以上一年以下罰金五円以上三百円以下

第四条。役人に関して。役人の職務に関して讒毀する者は、禁錮十日以上二年以下とし、罰金十円以上五百円以下とする。誹謗する者は、禁錮五日以上一年以下とし、罰金五円以上三百円以下とする。

第五条

華士族平民ニ対スルヲ論セス讒毀スル者ハ禁獄七日以上一年半以下罰金五円以上三百円以下誹謗スル者ハ罰金三円以上百円以下

第五条。華族士族平民に関して。左記の身分の上下に関わらず、これらに対して讒毀する者は、禁錮七日以上一年半以下とし、罰金五円以上三百円以下とする。誹謗する者は、罰金三円以上百円以下とする。

第六条

法ニ依リ検官若クハ法官ニ向テ罪犯ヲ告発シ若クハ證スル者ハ第一条ノ例ニアラス其ノ故造誣告シタル者ハ誣告律ニ依ル

第六条。例外について。法に携わる検察官、裁判官に向かって罪を告発、もしくは罪を証明する者は、第一条(讒毀と誹謗)に該当しない。そのため、罪を述べた者は、誣告律(誣告罪に関する法律)にしたがって処罰することとする。

第七条

若シ讒毀ヲ受ルノ事刑法ニ触ルゝ者検官ヨリ其事ヲ糾治スルカ若クハ讒毀スル者ヨリ検官若クハ法官ニ告発シタル時ハ讒毀ノ罪ヲ治ムルコトヲ中止シ以テ事案ノ決ヲ●チ其ノ被告人罪ニ坐スル時ハ讒毀ノ罪ヲ論セス

若シ事刑法ニ触レスシテ單ヘニ人ノ栄誉ヲ害スル者ハ讒毀スルノ後官ニ告発スト雖トモ仍ホ讒毀ノ罪ヲ治ム

第七条。もし、讒毀が当法律だけでなく刑法にも触れる場合は、検察官がそのことを厳しく問いただすこと。もし、讒毀を受ける者が検察官か裁判官に告発した場合は、讒毀の罪を裁定することを中止し、刑法によって事案の決議すること。被告人が罪を認めた時は、讒毀の罪は追及しないこととする。

もし、事が刑法に触れず、単に人の名誉を損ねただけの者は、讒毀の後、役人に、「刑法を犯した」と告発したとしても、それは受諾せず讒毀の罪を引き続き課すこととする。

第八条

凡ソ讒毀誹謗ノ第四条第五条ニ係ル者ハ被害ノ官民自ラ告ルヲ待テ乃チ諭ス

讒毀と誹謗の第四条第五条に該当する者は、すぐに裁定を行うのではなく、被害を受けた人自らの告発を待ち、それまでは説得すること。

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