現代語訳(続き)
第21条
一。他人の知行の百姓に厳重注意することについて、領主と奉行人に届け出を出さなければ、たとえ道理にかなっていると言っても、道理にはずれたものとして判断する。
非分 | 道理にはずれている |
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第22条
一。守護不入地について、改正するまでもない。ただし、その領主に問題があり成敗するに相当し、守護の役人が聞き込みに入った場合、法令の通り成敗することとする。数年前この法令を定めたのだが、なお領主に問題がある場合、重ねて成敗する。
第23条
一。駿府内での守護不入地については、これを破棄した。各々、異議申し立てしてはいけない。
第24条
一。駿河・遠江両国の海上通行税、または遠江の陸上通行税について、これを停止した。異議申し立てをする輩については、罪過に処す。
第25条
一。国質を取ることについて。今川家と奉行に断り申し上げずに、私的に国質を取る者は、罪過に処す。
国質 | 返済不能の場合、同地域に住んでいるという理由で、無関係の者の身体や財産を質に入れること。 |
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第26条
一。駿河・遠江両国の海岸に流れ着いた船について。違反行為を働くことなく、船主に返すこと。もし、船主がいないならば、その時に限っては、大破した寺社の修理に用いるべし。
寄船 | 流れ着いた船 |
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第27条
一。流木について。知行を問わず、取得して良い。
第28条
一。諸宗派の論争について。当国内においては、論争を停止すること。
第29条
一。諸出家について。後継者のために弟子をとると称して、弟子の叡智を計らずに寺を後継させることはこれより以降、停止する。ただし、状況に従うこと。
取たて | 抜擢すること。ここでは後継者の選定。 |
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第30条
一。駿河・遠江両国の者は、私的に他国の女性を娶ること、あるいは他国に婿を取って娘を遣ることを、これより以降停止するため、この行いを止めること。
第31条
一。私的に、他国の者が行う戦に及ばない物事に手助けすることを停止するため、これを止めること。
合力 | 助けること |
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第32条
一。三浦二郎左衛門尉、掛川城主朝比奈泰能の出仕が決まった。そのため、それ以外の者共は、徒にあれこれ決まりを設けてはならない。家臣として良きように取り計らうこと。弓矢争いの場でないのに意趣返しをして、座敷の順序を気にすることは公の場において不都合なことである。また、勧進を目的とした猿楽や田楽や曲舞が行われる際の座席については、これより以降、くじ引きで決めるべし。
自余 | それ以外 |
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惣別 | 総じて |
比興 | 不都合なこと |
第33条
一。他国の商人がその場にいる家臣と契約を交わすことは、一切停止すること。
結
以上33箇条。
33ヶ条は、常々思い当たっていたことを、治安維持のため、密かに作成したものである。この世の人々は狡猾になり、法の整備されていない事柄で争っている。この間に条目を構え、これは人々を落ち着かせるものとなった。条目を定めたため、これより不平等な言い争いはあってはならない。条目に記したような事柄が起きた際、この書を取り出し、裁決を下すべし。この他、国内に広く定着した慣習法や今川家が独自に定めた法はここに記すまでもない。
大永六年(1526)4月14日 今川氏親 印
紹僖 | 今川氏親の法名 |
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