プロフィール帳
当時の社会
『意見封事十箇条』は、律令制崩壊期の社会の状況を示す一級資料です。
そんな律令制の次に誕生したのが「負名体制」です。10世紀から11世紀にかけて成長、鎌倉武士の基盤となりました。
平安時代後期の社会システムがどのようなものだったのかは、こちらで解説しています。

どのような内容?
文字通り、12の条文で書き記されている『意見封事十二箇条』。それらを分類や文字数で分析してみましょう
内容一覧
まず、そもそも何が書かれているか知る必要があります。詳しい内容は現代語訳をお読みください。一言要約してみましょう。
| 序文 | 律令制の現状、仏教と国家の関係 |
|---|---|
| 第一箇条 | 干ばつ対策をして五穀豊穣を |
| 第二箇条 | 役人のぜいたく禁止 |
| 第三箇条 | 口分田の再調査を |
| 第四箇条 | 大学生に食料を |
| 第五箇条 | 舞妓の数を減らすこと |
| 第六箇条 | 公正な裁判のための人材確保を |
| 第七箇条 | 役人の給料の分配を |
| 第八箇条 | 小さな訴訟には対応しないように |
| 第九箇条 | 役の免除者の把握を |
| 第十箇条 | 検非違使の弩師は適正に選出を |
| 第十一箇条 | 僧や舎人の悪行の取り締まりを |
| 第十二箇条 | 港の整備を |
大きく分けると、
- 戸籍、土地の再編成[1・3・4・9]
- 腐敗(治安・政治)改善[2・5・6・7・8・10・11]
- その他[序文・12]
の2点が話題となっていることが分かります。
①戸籍、土地の再編成
先にも述べた通り、902年の延喜の荘園整理令行われていなかった戸籍や土地の再調査を求めています。税収が不安定なためです。
- 序文:859年において、人口約70人のうち、男は三人だったことが分かったのです。
- 第三条:記載されている百姓は大半が所在不明の者でした。
挙げるとキリがないので2点だけ取り上げますが、もうこれだけでも口分田の調査が杜撰であったことが分かります。
- 第九条:現在、近江国、丹波国の両国はすっかり国力が衰えています。勘籍人を過剰に許可したことが原因なのです。
勘籍人とは、役の免除対象となる者のことです。第九条では、勘籍人の乱発により税収が減ったと述べています。このように、畿内周辺国ですら律令制で管理できないほど社会システムが崩壊していました。
②腐敗(治安・政治)改善
当然、社会システムが機能していないので、治安は悪化します。政治機構すら悪化していました。
- 第六条:職員令によると、大判事2人、中判事2人、少判事2人の計6人が罪の決定権を有しています。しかし少し前から大判事1人で常に判決を下しています。
- 第十条:しかし、現在、検非違使に携わる者は、皆各国の百姓であり、贖労料を納めている者であります(検非違使としての知識がない上に、贖労により職務に当たっていない者が多いという意味)。
- 第十一条:凶暴で邪悪な者が悪僧から宿衛を任されています。
こちらも挙げるとキリがないので3点だけ取り上げますが、民が暴徒化している、殺人が平気で起きている、といった内容ではなく、治安維持に関わる側の腐敗を指摘しています。世も末ですね。特にこの治安に関しては僧が絡んできます。宗教勢力が治安悪化に加担しているというわけです。
序文において、仏教が治安悪化に結び付いたと言及している箇所があります。それも踏まえて僧の不適切な行為を陳序しているのでしょう。
文章量
文章量によってその重要度に差が生じるか調べました。上の一覧に文字数を付け足しています。
- 序文 :[1200字]
- 第一箇条 :[800字]
- 第二箇条 :[800字]
- 第三箇条 :[300字]
- 第四箇条 :[1000字]
- 第五箇条 :[300字]
- 第六箇条 :[450字]
- 第七箇条 :[250字]
- 第八箇条 :[900字]
- 第九箇条 :[700字]
- 第十箇条 :[450字]
- 第十一箇条:[700字]
- 第十二箇条:[450字]
序文を除いて特に文章量の多い条文にマーカーを引きました。
第1・2・4・8条ですね
では先ほどの分類をもう一度もってきます
- 戸籍、土地の再編成[1・3・4・9]
- 腐敗(治安・政治)改善[2・5・6・7・8・10・11]
- その他[序文・12]
特にどちらに偏っているというような傾向は見られませんね。どちらも重要だということを意味しているのかもしてません。
見やすいようにグラフ化してみました。


ピンク:①戸籍、土地の再編成[序文・1・3・4・9]
青 :②腐敗(治安・政治)改善[2・5・6・7・8・10・11]
黄色 :③その他[序文・12]
文字数でみると、腐敗(治安・政治)の文字数が多いですね。そもそも該当する項目数も多いので自然なことです。腐敗の改善をより重点的に行わなければ、戸籍や土地の再編成がままならないということでしょうか。
以上、解説でした!
現代語訳一覧
各条文の現代語訳はこちらです!
| 現代語訳一覧 | ||
| 序文 | ||
| 第一箇条 | 第二箇条 | 第三箇条 |
| 第四箇条 | 第五箇条 | 第六箇条 |
| 第七箇条 | 第八箇条 | 第九箇条 |
| 第十箇条 | 第十一箇条 | 第十二箇条 |
序文
なぜ、今この意見書を奏上するのか。まずは国が崩壊している原因を知る必要がある。仏教か、遷都か、はたまた別の要因か。
第一箇条
とにかく農業!豊作が最優先!
ということで、改めて、全国から豊作儀式の資金をきちんと集めましょう!毎年やってるはずなんだけど・・・ってことは、誰かが横領してる!?まさか・・・
第二箇条
律令崩壊の一因は、役人の傲慢さにあり!古の聖人を目指して、節度を持つよう願い入れます。宴会、葬儀etc・・・。位に応じて制限を設けましょう。
『大宝律令』の時から、そうしてるはずなんですけどね。
第三箇条
百姓の半分が行方不明。いったい誰が田を耕しているのか?そもそも納税されてるのか?
第四箇条
未来をつくるのは、今の若者。学生に腹いっぱいご飯を食べてもらって、いっぱい勉強してもらうよう促します。
ここでなんと、応天門の変の伴善男が登場!
第五箇条
美女の舞子が多すぎます!既婚の美女を呼んだら風紀が乱れます!
数を減らす代わりに、未婚の美女を呼びませんか?
第六箇条
裁判官がバカすぎます!勉強した者から採用してください!
第七箇条
まさかのまさか、平安時代から役人の給料未払いがありました。エリートが卑賎な習俗に染まっていくのは見ていられません。まるで令和のような・・・。歴史は繰り返します。
第九箇条
納税システムの崩壊は、律令制に基づく土地政策以外にもありました。それは・・・
第十箇条
治安を守る「検非違使」。しかし、10世紀の検非違使は、法律も勉強したことのない、ただの暴力団でした。
第十一箇条
とにかく、国中どこを見渡してもハゲ頭。自然、治安を維持する側の職に彼らが介入してきます。当時の僧の民度といったら・・・?そんな連中が治安維持をしたら・・・?
第十二箇条
行基が造り、往来で賑わった港も、今や見る影もなし。それもそのはず、海運技術が発達したからです。しかし、それでも再建する理由はあります。それは、多くの民の命を守るものでした。
現在の兵庫県明石市にも残る遺跡が登場します。兵庫県民の方、必読です。
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