第61条~80条
第六十一条
一たうそくとしてせいはいののち、くたんのぬす人とも、いかやうのちうせつ・なし候とも、つやゝゝゆうめんあるへからす、ならひにかのぬす人のしそん、ミたりにめしつかうへからす、又しなん有へからさる也、
盗賊として成敗された後のその盗人について。
主人に対していかなる忠節をみせたとしても、少しも宥免されることはない。
並びに、主人は、その盗人の子孫をみだりに召し使ってはならない。
また、殺すようなことがあってはならない。
第六十二条
一たうそく人をつかけ人のさいしよへとめ・はうしをうつとかうして、もんかきをきり、其ていしゆへ申とゝけすしてまかりかへり、ぬす人かくこのよし申かくる事、ひふんのさたなり、かくのことくのあくたう、ひるにてもよるにても、人かしら、あるひハうし、むま、あるひハておひなと、在所のうちにて、其者をさし、とりいたすへきしせうあるの物ならは、ていしゆへ申とゝけ、かの在所をさかすへし、さかさせましきのよし申に付てハ、さいくわたるへし、然にもしぬすミ物とさし、ぬす人とかうし、申つのるへき支證なき・ものならは、その在所へ申とゝくるにをよハす、いけくちをとり、ひろうすへき也、又人の在所をさかし、ぬす人あらハれきるに付てハ、其在所のぬし、さかしてともに、をつとあるへからさるなり、
盗賊の追跡者について。
盗賊が在所(人のいる所。人の家。)に逃げ入り、追跡者が放士(盗人など野放しの人)を討とうとその家の門鍵を切って、その亭主へ届け出をしないまま立ち去り、後になって
「この亭主は盗人を格護していた(匿った)。」
と申し立てることは、非分な(道理に合わない)訴えである。
このような悪党というのは、昼夜を問わず、人命を奪ったり、あるいは牛、馬を盗んだり、または殺傷したりする。
人の家において、その者の犯行だと指し示し、捕らえるための証拠があるのであれば、そこの亭主に届け出て、中を捜索すべきである。
亭主が
「捜索させない。」
と申すのであれば、罪科に処す。
盗品の場合について。盗品を指して、
「盗人の仕業である。」
と主張するに足る証拠がないであれば、
「その家は盗人を格護している」
という旨の届け出をするまでもない。盗品かどうかは、当人を捕らえて披露に及び、そこで明らかにするべきである。
また、人の在所を捜索している最中に、盗人が現れ出た場合については、その家の亭主、探し手ともに、越度(責任)とはならない。
第六十三条
一ぬす人とうさいの事、さうもつわけはふくの時、そのはへいてすといふとも、ぬすむところの物をとるに付てハ、とうさいたるへきなり、又たうそくのとりたくミたんかうの人しゆ、俄にかくこをひきかへ、そのはへいてさる事ありといふとも、はくしやうにのするにいたつてハ、さいくわたるへし、ぬす人にくミするのゆへなり、
盗人と同罪になることについて。贓物(不正に手に入れた金品。盗まれた財物のこと)を分配する時、盗みを働いていなくても、その場にいれば、盗んだものの一部を手にしている以上、同罪とする。
また、盗賊の主人が、急に盗人の格護(保護)を引き換えに談合する場合(分配の場にいないことを意味する)があるが、格護の旨を白状すれば、罪科に処す。盗人に与したが故である。
第六十四条
一他国のあき人、其外わうふくのはんミん、あるいは山たち、あるいハ事をさうによせ、人のさいほうをうはひとる事、あとさきのかうむらのをつとたるへし、たゝしかのとかにん・申いつるにおゐてハ、其とかをのかれへきなり、
他国の商人や、その他往復する全て民、山立(山賊)が、何かしら事の騒ぎに紛れて人の財宝を奪い取る行為については、前後の郷村が責任を負うべきである。
ただし、その罪人が自ら申し出て来た場合には、その責任は免れるものとする。
第六十五条
一山中ゆきかへりの人を、ぬす人、かり人となすらへ、人のさい
ほうをういはとる事、そのれいおほし、しかるうへハいまよりの
ち、かり人路次中より三りのほかにしてこれをなすへし、三りの
うちにてかりをいたし候ハゝ、ぬす人のさいくハたるへし、たゝ
しかり人しゝにめをかけ、をひきたらは、是非にをよハさるなり、
又山人たき木をもとめに、ミやまへわけ入のとき、山たちかり人
となすらへ、山人をとる、しかるに山人ふりよにのかれきたり、
かり人を見しるのよし申いては、くたんのぬす人、たとひまこと
のかり人なりとも、山人のくちにまかせ、たうそくのさいくわに
しよすへき也、
山中を行き来する人に対し、盗人やら狩人やらに偽って財宝を奪い取る事例が多い。
かくなる上は、狩人は、路次から三里以上離れた場所で、狩りを行うようにする。三里以内で狩りを行った場合は、盗人として罪科に処す。ただし、狩人が獅子(ここでは獣)に目を掛け、追い立てている最中であれば、是非を問わない。
また、山人が薪を求めて深山に分け入った時、山立が狩人と偽って、山人を捕らえる場合がある。山人が幸運にも逃げ戻り、「この狩人を見た。」と申し立てた時は、その盗人が、たとえ本当の狩人であったとしても、山人の申し立てに任せ、盗賊として罪科に処すものとする。
狩人の犯罪防止を目的として、その活動範囲を制御したため、強盗行為は狩人はしない前提となっています。
そのため、狩人の正体が本当に狩人だろうが山賊の偽装だろうが、それには関わらず、山賊の行為として処罰する、と言っているのです。
第六十六条
一人のさいしよのうちへ、かきをこえ入候者、ぬす人とうさいたるへきなり
人の家のの内へ、垣を越えて侵入した者は、盗人として処罰する。
第六十七条
一身うりの事、ぬす人のさいくわたるへし、然にかいてくたんの
身うりゆらいなきのゆへににけぬすミの事、はんしやをたてゝか
ふのときに、かの身うりにけうするとき、はんしやの事ハ申にを
よハす、やといたし候もの共に、さいくわたるへき也、
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身売りのことについて。以下の場合、盗人として罪科に処す。
買い取った後、身を売った者は、素性が分からないために、逃げて盗みを働くことがある。
半者(仲介者)を立てて買い取った場合、その身売りが逃げ失せても、半者のことは訴えてはならない。
本人とともに、雇い入れた者たちも盗人として罪科に処す。
第六十八条
一下人、其ほかうりかひのうせ物の事、其うりて相うせ候におゐてハ、はさんのをつとたるへきなり、
下人やその他の売買での紛失物について。売り手が失った場合は、破産の責任を負うべきである。
第六十九条
一ふたいの下人、あるいはにけはしり、あるいは人にかとはれ、うられものゆくまゝに、しせんほんこくにかいとめられ、人にめしつかハるゝのとき、ほんのしう人、かれハすてにとかにんたり、しかるにめしつかハるゝ事、ぬす人のよし申かくる、いまめしつかふところのしうにん、かのものハなにかしのかたより、しろくかいとるのよし、てつきをひく、しろくろいまたさたまらす、とかくのもんたうに月日をうつすのうへ、かのけにんなすところのつミをおそれ、かさねてにけうするのとき、まへにてつきをひき候うりて、うらさるよしもんたうにをよふ、相たかいにしせうまかせたるへし、もししせうなく、さうろんけつしかたきに付てハ、いまかいとめぬる人のをつとたるへし、ぬす人とうさいたるへき也、
逃亡したり、人に雇われたり、売られるに身を任せたりしている譜代の下人が、自然と、本国で買い留められ、人に召し使われていた場合、本主(本来の主人)が、
「その雇い主はすでに罪人である。私の下人を召し使っているということは、つまり盗人なのである。」
と訴え出ることがある。
現在召し使っている主人(雇い主)が、
「その者は、某の者から正当に買い取った。」
として、手継(手続き証文)を引くと、現在の雇い主に売った人も関わるため、裁定が長期化するわけだが、白黒が決まらず問答に月日を費やすうちに、その下人が自分の罪を恐れて、再び逃亡した場合は、前の手継にあたる売り手が、売るのをためらった理由の問答に及ぶこととする。これに関しては、売り手と現在の雇い主との双方の支証(証拠)に任せて裁定すべきである。
もし証拠がなく、争論を決し難い場合については、現在その者を買い留めていた人(雇い主)の責任とし、盗人と同罪とする。
売買には流れがあります。AからBへ、そしてBからCへ。その流れのことを「引く」といいます。
第七十条
一ろしをとをるやから、あるいハさくもうをとり、あるいはてん屋のものをぬすむ事あらは、すな・ハち其身をからめ、ひろうすへきのところに、すてに人をころしてのゝち、しにんのとかをひろういたすといふとも、りひをたゝすにをよハす、せつかいのちうくわにしよすへきなり、しにんのあやまりしせうなき・ゆへなり、
路次を通行する者で、作毛(作物)を取ったり、店屋の品物を盗むことがあったならば、直ちにその身を拘束し、披露すべきである。その者が、すでに人を殺した後で、死人が犯した罪を申し開いたとしても、理非を糺す必要はなく、殺害の重科として処すこととする。死人には、その真偽を立証する支証がないからである。
第七十一条
一みちのほとりにて見つけ候ひろいものゝ事、にし山のはしもとにふたをたて、かのおとしたるものゝいろしなを、まきれなく申いて候ともからに、返しわたすへき也、しからハ十分一のれゐをいたし、うけとるへき也、もし又見付候ものなかくかゝへをくに付てハ、さいくわたるへき也、
道のほとりで見つけた拾い物について。西山(桑折西山城こおりにしやま。『塵芥集』を制定した伊達稙宗の居城)のはしもと(詳細不明)に札を立てること。
その落とし物の色や品名を、誤りなく申し出る者がいたならば、その者に返し渡すべきである。その場合、拾得者は、十分の一の礼金を受け取ることができる。もし、落とし物を見つけた者が、それを届け出ずに手元に長く抱え込んでいた場合は、処罰する。
第七十二条
一人の下人こうちかくれの事、きよゝういたし候ともから、とき
日をうつしいたす事あらは、ぬす人とうさいたるへき也、たゝし
しさゐによるへし、
人の下人やこうち(詳細不明。生口のことか)が身をくらませることについて。
これを許容した(匿った)者が、日時が経過してもその主人に差し出さなかった場合は、盗人と同罪とする。ただし、子細によるか。
第七十三条
一ぬす人のさいしよへおしかけ候とき、かのとか人あひはつるゝのうへ、ぬすむところのさうもつたつぬるところに、となりのいへにあり、かの家ぬしも又にけ、ならひの在所へはしり入、其在所のぬしをたのミ、とかなきよし申事あり、はしり入候もの、かくこいたし候もの、ともにさいくわたるへし、とかにんをたすけんと、とうしんするゆへなり、
盗人のいる所へ押しかけた時、その咎人(盗人)には会わなかったが、贓物(不正に手に入れた金品。盗まれた財物のこと)を探し尋ねると、隣家にあることがある。
その家の主人もまた逃亡し、同じ並びの家に走り込み、そこの主人に頼んで「自分に罪はない」と申し立てさせることがあったならば、逃げ込んだ主人も、格護した(匿った)主人も、ともに罪科に処す。咎人を助けようと同心(同情)したからである。
第七十四条
一いけくちしに候ものをはたらくのとき、その年月をかんかへ、その子十よりうちの事ならは、おやのとかをかけへからす、十才よりうへのときの事ならは、しにたるおやととうさい又むこもミやうたいつき候ハゝ、とうさいたるへし、
生口が死亡した場合の処置については、年齢を考慮するものとする。その者の子が十歳未満である場合は、親の罪を子に及ぼしてはならない。十歳以上である場合でも、死んだ親と同罪とるする。または、婿が名代(代理人)として付いているのであれば、婿もまた同罪とする。
第七十五条
一人の家に火を付候事、ぬす人とうさいたるへし、
人の家に火を付ける行為は、盗人と同罪とする。
第七十六条
一地とうと百しやうとのあひたの事、たいゝゝのひくわんたりといふとも、人のひやくしやうをふるのうへハ、ねんくしよたうの事、あひさたまることくこれをはたらくへし、ふさたのときハ、かの地けん、よにんにあひわたすへきなり、然にゆうしよのよし申、けんもんをひきかち、かの在家にいらんいたすに付てハ、せいはいをくわふへきなり、
地頭と百姓との間の境界について。たとえ、代々被官(家臣)であったとしても、人につく百姓である以上、年貢所当(田畠にかけられた定額の租税のこと。年貢と同一視される場合がある)は、定められたとおりに履行する必要がある。
不沙汰の場合(怠った場合)は、その地権を、他人に引き渡すこととする。由緒を話に持ち出したり、権門を頼ったりして、その家に違乱する(権門との秩序を乱す)場合は、成敗を加えることとする。
第七十七条
一ひやくしやう、ちとうのねんくしよたう・相つとめす、たりやうへまかりさる事、ぬす人のさいくハたるへし、仍かのひやくしやうきよようのかたへ、申とつくるのうへ、せういんいたさす候ハゝ、かくこ候・やからとうさいたるへきなり、
百姓が、地頭への年貢所当の勤めを果たさず、勝手に他領へ逃げ去った場合は、盗人と同様の罪科に処す。
その百姓を許容(匿った)した他領の者に対して、引き渡しの旨を申し届けた時、その他領の者が承引(しょういん。承諾)しなかった場合は、格護したとして同罪とする。
第七十八条
一しよゝゝの地とう、そうせいはい、しゆこのつかい、ちけにんにたいし、年貢もろゝゝのくうしふさたのよし、しちとりにをよふのとき、百しやうらはやくしちをわたすへし、然處に地下人このむねをそむき、もんたうにをよふのうへ、ときのしあはせにより百しやうをうつ事あらは、ひくわんたりといふとも、はつとにそむくのゆへ、うたれ候やからのふうんたるへし、如斯のしさ
いあらは、まつゝゝしちを相わたし、しゆこつかい、・そうせいは
い、ちとう申かくるところもしひふんたらは、其さた有へし、但
其様体によるへき也、
諸々の地頭、惣成敗、守護の使者が、地下人に対して、年貢やその他諸々の公事に不沙汰(滞り)があるとして、質取り(担保徴収)を行う場合について。百姓ら(地下人)は、速やかに質を渡すこと。
ただし、地下人がこの趣旨に背き、問答に及ぶことがある。時の成り行きによって百姓を打つ(殴る)ようなことがあれば、たとえ被官(家臣)であっても、法度に背いた行為であるため、打たれた者は不運(無罪)とする。
このような事態が起きた場合は、まず質を返し、守護使、惣成敗、地頭が申し立てる内容を審議する。もし、彼らに非分があったならば、沙汰あり(裁定を下す)とする。
ただし、罪科は、その状況による。
地下人から直接年貢を徴収する被官を「惣成敗」といいます。被官らは、伊達家に一定の年貢を納めれば、残りを自分の物にできました。
第七十九条
一ちとうりやうしゆしさいあつて、さくもうにふたをたつるのとき、其百しやう事のよしを申わけすして、かのふたをぬきすて、さくもうをかりとる事、さいくわにしよすへき者也、
地頭や領主に子細があって、作毛に札を立てることがある。その子細ある百姓の事情を申し分ける(知る)ことなく、札を抜き捨てて作毛を刈り取る行為は、罪科に処すこととする。
第八十条
一百しやうゆうしよのさいけをしさり、たりやうにして、いてつくりいたす事、かつてもつてきんせゐたるへし、此はつとをそむき、ゆうしよのさいけへかへらすハ、いますむところのちとう、くたんの百しやうともにもつて、せいはいをくわふへきなり、
百姓が、由緒ある(縁のある)在家を去り、他領へ移って出作(でづくり。他領の田畑を耕すこと)することは、以前から禁じられている。この法度に背き、その在家へ帰らない場合は、現在住んでいる所の地頭と、当該の百姓、共に成敗を加えることとする。
しさる:後ずさりする 転じて、去る
第81条~100条
第八十一条
一地とううつりかハるしよたいの事、たうちとうかのさいけのさかひ、てんはくのありところしらさるのゆへ、百しやうてんちをふミかくし、年貢しよたうを抑留せしめは、ちうさいたるのうへ、さいし、けんそく、なこのもの以下、さいけ一けんのうちのおとこ、をんな、ことゝゝくちうくわにしよすへきなり、たゝし其名子にても、百しやうのひくハんにても、かくすところのてんちを申あらはすにいたつてハ、其者のとかをゆるすへし、仍地とうにたいしてちうせつたるのうへハ、かの在家のゆうしよふんを・わたすへきか、
地頭が交替した時の所帯に関して。
当地頭と新地頭の在家の境界や、田畑の所在を知らなかったことを理由に、百姓が田地を踏み隠し、年貢諸当を抑留した場合は、重罪としたうえで、妻子・眷属・名子以下、一軒の在家に属する男女まで、悉く重科に処すこととする。
ただし、名子であっても、百姓の被官であっても、とにかく誰かが隠した田地の所在を申し開けば、罪は赦免とする。その者は、地頭に対して忠節であるとして、その在家の由緒分(正当な知行や権利)を引き渡すべきである。
隠すは申告しないの意味合いが強いです
第八十二条
一在家一けんのうちのてんはく、ならひのさいけにふミそへ候事、ふミそへ候もの、ふミそへさせ候もの、ともにもつてさいくわたるへし、すてにたんかうせしめ、とうしんいたすのゆへなり、又たりやうふミそへ候地、百しやうとひやくしやう同心之故、・かの地ハせんゝゝよりなにかしもちきたるところ也、ふミそへ候事いつハりのよし申、又さゝへ候ものと、もんたうけつしかたきに付てハ、其郷内の百しやうともめしいたし、これを尋さくり、其うへの是非により、そのさた有へきなり、
一軒の在家に属する田畑を、隣接する別の在家の田畑に踏み添える(勝手に立ち入って自分の土地に編入する)行為については、踏み添えた者、踏み添えさせた者共に、罪科に処す。この二者は、すでに談合して、同心(共謀)していたからである。
また、他領の土地を踏み添えた場合、これは百姓と百姓とが同心した結果であるため、
「その土地は代々、誰それ(身内や縁者)が持ち伝えてきたものだ。」
と偽って申し立てる者と、それを支持する者との問答になってしまう。裁定が決しがたい場合は、その郷内の百姓たちを召し出し、事情を尋問して真相を探り、そのうえで沙汰あるようにすること(裁定を下すこと)。
あえて田畑面積を減らすことで、年貢を抑えたり、地頭や領主に対して嫌がらせをしたり、
見返りを求めて田畑の一部と取引する例などが挙げられます。
第八十三条
一ゆうしよもんたうの事、地とうまかせのよしさたおハりぬ、しかるに百しやうしうにんをひきかち、又ハけんもんのちからをたのミ、あるひハさくもうをなき、あるひハてんちをうちかへし、かのしよたいをあらし、いらんにをよふ事あらは、百しやうの事ハ申にをよはす、かうりよくのやから、共にもつてさいくわにしよすへきななり、
由緒に関する問答(争論)について、地頭任せの裁定は廃止とする。
百姓が主人を引き込んだり、権門の力を頼ったりして、作毛を薙いだり(刈り取ったり)、田地を打ち替え(強引に作付ること)たりして、その所帯を荒らして、違乱(狼藉行為)に及ぶようなことがあれば、百姓の行為については問うに及ばず(必要はなく)、合力(協力する)した輩も共に罪科に処す。
第八十四条
一よう水の事、せんきまかせたるへし、然にせんゝゝさたまり候せきくちをあらため、ミつかミの人、是をとをすましきのよし、いらんにをよふ事、可爲越度、又河下の人せんきまかせにとをすへきのよし申、川かミの人ハせんきよりとをささるよし申、もんたうのきあらんに、相互に支證なきのうへ、理ひけつしかたきにいたつてハ、萬民をはこくむのゆへ、彼用水をとをすへきなり、
用水の件については、先規(先例)に任せるべきである。とはいえ、代々定められてきた堰口を改めた時、水上の者が、「川下の者に通すまい。」として、違乱(狼藉)に及ぶことがあれば、それは越度とする。
また、川下の者が「先規に従って水を通すべきである。」と主張したり、逆に川上の者が「先規に従って通さない。」と主張したりといって、問答(裁判沙汰)に発展しそうな兆しがある時がある。
この時、双方に支証がなく、道理の判断がつき難い場合は、水は万民を育むものであるから、その用水は通すこと。
第八十五条
一用水に付てせきをあけ、つゝミをつく・のとき、せんゝゝとをり候みそ、ほり、かハくつれとしてたいてんのとき、ならひの在家之内に江ほりをたて、よう水をとをすところに、くたんの地とうひやくしやういらんにをよふへからす、せきせんのありなしハ、せんれゐにまかせへきなり、
用水に関して。堰を開き、堤を築く際、代々水が通ってきた溝、掘、川が崩壊して退転(たいてん。前より事態が悪くなること)となり、人の住む家の範囲内に江(用水路)を掘り立て、用水を通すことになる場合がある。
その場合、その場所とその家の百姓は、違乱に及んではならない。
堰銭(せきせん。堰の維持に関わる費用負担)があるか否かは、先例に任せること。
第八十六条
一せんゝゝのせきは、あるひハふかき淵となり、あるひハくわうやとなり、しゆりたい・とたるのうへ、たいてんのとき、ちきやうのこしらへやすきたよりに付て、川かミにても、河下にても、せきはをあらたむる事、一かうのうちたらは、せひのいらんにをよふへからす、もしたかうにいたつてハ、事のしさいをひろう致へし、其上をもつて、そのさた有へきなり、
代々の堰が、深い淵となったり、荒野となったりして、退転(事態が悪化)することがある。その際、地形を整えやすいという理由から、堰の場所を改めることがあるが、それが川上であれ、川下であれ、一つの郷内であれば、その是非について違乱に及んではならない。
もし他郷に至る場合は、事の子細を披露し、そのうえで裁定を下す。
第八十七条
一はんにんののミ水として、なかれをくミもちゆるのところに、河かミの人けからハしき物をなかし、ふしやうをゝこなふ事あるへからす、次に一人のために、其人の在所へせき入なかれをとゝめ、のミ水にうへさする事、さいくわたるへし、
万人の飲み水として流れを汲み用いる場所の川上で、穢らわしい物を流したり、不浄な行為をしたりしてはならない。
また、在所へ堰を入れて流れを止め、飲み水を不足させるといった、自分勝手なことをする行為は、罪科に処す。
第八十八条
一用水のためにつゝミをつくのところに、れんゝゝ・水まし、人の領分このつゝミゆへにあれ地となる、仍かの地ぬしいらんにをよふ、そのいはれなきにあらす、しからはこれをあいやめへきなり、たゝし用水ハはんミんのたすけなり、一人のそんまうによりこれをやめん事、すこふるたミをはこくむたうりにかなハさるもの也、せんするところハ、・あれ・つへきふんさいかんちやうをとけ、さうたうのねんくを、くたんの地主へはたらかせ、こしらへかたむへきなり、
用水のために堤を築いている最中、次第に水かさが増して、領分が荒地となる場合がある。
その地主が違乱に及ぶのは、理由がないわけではないが、原因がこの場合であっても、止めること。
用水は万民の助けであり、一人の損亡(損害)によって堤の維持を止めるのは、きわめて多くの民を育むという道理に逸れた行為である。
そこで取るべき処置としては、荒れてしまった土地の分際勘定(その土地にかかる税の調査)を行い、相当の年貢を、その地主へ支払い、堤を固める(築造を続行する)こととする。
堤を造ると、水の流れが変わるだけでなく、堰き止められる箇所が発生します。これによって水かさが増し、水没や湿地化といった影響がでます。
第八十九条
一せんゝゝよりありきたるつゝミ、しゆりをなさすしてたいてんのとき、くわうやとなる、しかるをそうりやうしきとなすらへ、ほしひまゝにかうさくはとなす事有へからす、せいはいあるへきなり、
代々存在した堤について。修理を行わなかったために、退転(劣化)して荒野になることがある。
この時、惣領職(そうりょうしき。一門を統率し、所領などを管理、代表する権限のこと。役職名ではない)を自称して、思うがままに耕作地にすることはあってはならない。
この場合、成敗の対象となる。
第九十条
一河のほとりのしよたいの事、をしきりハ本地に付へし、川つくれハをし付次第たるへきなり、しかるに水よけをなす事あらは、本川をなかるゝのやうに是をなすへし、又川むかいの地ぬしも同然たるへきなり、
川のほとりの所帯について。
押し切り(氾濫による侵食)地の権利は、本来の土地に帰属することとし、川崩れは、その次第に従うこととする。
水除け(護岸工事)を行う場合には、本川の流れを大きく変えないで行うこと。
川向かいの地主についても、同様である。
第九十一条
一ミついさかいの事、用水のはうにまかすへし、然にもんたうにをよひ、人をちやうちやくせしむるともからハをつとたるへし、人をころすにいたつてハ是非にをよはす、其成敗有へき者也、
水に関する諍いについては、用水側の決定に委ねることとする。
しかし、問答に及び、人を打擲(ちょうちゃく。殴る)するよう命じた輩は、用水側であろうと責任を負わせる。人を殺すに至った場合は、是非に及ばず、その者は成敗する。
第九十二条
一山川そうりやうしきのよし、そ・のれいおほし、しかるにそしかたもちきたる地あり、せんきにまかせ、是をあらたむへからさるなり、
山や川が惣領職(そうりょうしき。一門を統率し、所領などを管理、代表する権限のこと。役職名ではない)によって管理されている例は多い。そのため、庶子(しょし。側室との間に生まれた子供)が土地を一部所有する場合があるが、所有権は、先規(せんき。先例やしきたり)に任せ、改めてはならない。
一門の代表者ということは、宗家の嫡男等が挙げられます。戦国時代は、大名家に関わらず側室を抱える場合が多いため、その子らにも所有権が渡る例が多いのです。
第九十三条
一しよたりやううりの事、せんはんに付へし、うりてのとかの事ハ、時宜によるへし、
所帯を両売(りょうばい。別々の相手に売ること)することについて。
争いが生じた場合は、先判(せんばん。ある時点より先に出された証明文書のこと)の内容に従うべきである。売り手に咎がある場合については、時宜による。
第九十四条
一しよたいうりかふのとき、せうもんをとり・わたすのうへ、かいてたいもつをすまささるところに、うりぬし申ことくハ、ようゝゝ有に付て、さうてんのしよたいをうりわたすのところに、たいもつふさたのゆへ、よにんにうるよし申、うりて越度有へからす、たしうりて、かいてなつとくせしめ、せうもんとりわたすのところに、あたいのたかきやすきにより候て、せんはんをくゑかへし、別人にうる事、うりての越度也、仍しよたいにおゐてハ、先判につけ、後判のかたへハ、うけとるところの代物を返へきなり、
所帯を売り買いする時のこと。
証文を取り交わし済みで、買い手が代物(だいもつ。代金のこと。「だいぶつ」と読むと、代わりの品の意)をまだ支払っていない状況の時、買い手が
「売り主が、『相伝(渡す)の所帯を売り渡そうとしていたが、貴方は代物に不沙汰(未払い)があるので、色々あって、余人(他人)に売ることにした。』と言っている。」
といった申し立てても、この行為は、売り手の越度とはならない。
ただし、売り手と買い手とが納得したうえで証文を交わしたというのに、後で価格の高い安いを理由に先判を覆して悔返(くいかえし。相続、譲渡した財産を、自分の意思で取り戻す行為)を実行し、別の者に売却することは、売り手の越度(違反)である。
したがって、所帯については、先判を有効とし、後判の者には、受け取った代物を返さなければならない。
この悔返は、『御成敗式目』では認められていました。
第九十五条
一しちにかき入候しよたい、餘人にたんかうせしめ、永代うり、かのしやくせんをすまし候に付てハ、是非にをよハす、若又かの所帶なかれ候に付而、一人ハしちにとりなかすのよし申、一人ハ永代かいをくのよし申、問答あらハ、兩買のさたのことくたるへき也、
質に入れていた所帯を、余人と談合したうえで、永代売り(土地の所有権などを、無期限で永久に売り渡すこと)をし、その借銭(借金)を完済した場合には、是非に及ばず(論じるまでもなく)、その売却は有効とする。ただし、その所帯がまだ買い手に引き渡されていない時に、一方が「質として取り戻す」と主張し、もう一方が「永代で買い取った」と主張する争論となった場合には、両買(両売)の沙汰(裁断)と同様に処理することとする(第条のこと)。
永代売りについては、江戸時代の『田畑永代売買の禁』でも登場します
第九十六条
一ねんきにうり候所帶を、餘人にたんかういたし、ゑいたひうる事、ねんきのうちたらは、りやううりのしゆんきよたるへし、たゝし年記のすゑを買候者、うりての越度あるへからさる也、ちきやうの事ハ、任證文たるへし、
年季売り(土地を10年などの一定期間で売却する売り方。満了後には強制的に売主に所有権が戻る)した所帯を、余人と談合し、永代売りに変更する場合について。
年季の期間内であれば、その権利は両売に準拠することとする(第条のこと)。
ただし、年季満了後に買い取った者については、売り手に越度(責任)はない。知行(主君から与えられた土地。その土地に付随する権利も付与される)については、証文に従うべきである。
期間内に変更ということは、先に年季売りにした契約書があるわけですので、それに従うように、といっています。
対して満了後は、その権利は売り手に戻ってきているので、第三者に対して満了後に永代売りにしても、問題はないということです。
第九十七条
一年記にうる所帶の事、たかいに證文をとりわたすといふとも、うりてにても、かいてたりとも、さいくわあるのときハ、先例にまかせ、けつしよの地たるへきなり、
年季売りした所帯について。互いに証文を取り交わしていたとしても、売り手であれ、買い手であれ、その時点で罪科持ちであれば、先例に従い、その土地は欠所(けっしょ。財産没収刑)とする。
第九十八条
一はいとくの所帶、書くたしをとり、ちきやうせしむるところに、くたんのしよたい、ようゝゝ有によつてうり地になす、しかるにうりぬしさいくわあるのとき成敗をくわへ、所帶等けつしよせしむ、とかにんのうり地たるにより、おなしくけつしよになる、然處かいぬし、まへのしよたいぬしにかきあたふるはんきやうを用て、書くたしの地なるよし、そせうをくハたつ、なんそとかにんにあたふる判形相立へけんや、かくのことく心のしきよくをかまふるともから、いまよりのち相やむへきものなり、
買得(かいとく。金銭で土地や権利を購入すること。お買い得という意味ではない)した所帯について。
書下(かきくだし。証文のこと)を取り、知行となったところに、その所帯が、色々あって売地となることがある。この時、その売り主に罪科があれば成敗を加え、その所帯は欠所とする。その売地は咎人の売地となるため、第条と同様に欠所とするのである。
ところが、買い主が、前の所帯主(欠所として没収される前、つまり本来の土地の所有者)
に与えられていた判形(正式文書の中でも、署名や花押が押されているもの。)を使って、「これは書下された土地である。」と主張して、訴訟を企てることがある。
どうして咎人に付随する判形に効力があろうか。このような私曲(しきょく。心の曲がった行為、考え)を持つ輩は、今後一切止めよ。
第九十九条
一書くたしをとらさるかい地の事、かのうりぬしとかあるのゆへ、けつしよの地となる、しかるにうりてめしいたすのうへ、ほんりやうのよし申、そせうのときかへしたぶに付てハ、いせんのかいてにかへし付らるへし、たとひうりてのしそんにあらすといふとも、其名代をあひつき候人躰ならは、うりけんのせうもんにまかせ、これを付あたふへきなり、但別人のおんしやうとして、あてをこをふにいたつてハ、さたのかきりにあらさるなり、
書下を取らないまま買った土地について。売主の方に咎があるため、その土地は闕所となる。この時、罪人となった売主の関係者が、買い手を召し出して、「これは我が本領である。」と訴訟を起こすことがある。
結果、その闕所が返却されることになった場合は、売主の関係者ではなく、買い手に返すこととする。
手続きは、その者が売主の子孫でなくとも、売主の名代として関係を持つ者であれば良く、売券(うりけん。売り手が買い手に渡した譲渡証文)に従って、その土地を与えること。
ただし、この土地が全くの別人の恩賞として宛行(あてがい。領主が所領などを家臣に一方的に譲渡すること)された場合は、この限りではない。
宛行の場合も、宛行状という公式の譲渡証文が出されました。この場合をいっています。
第百条
一本せんかへしねんき地の事、うりて、かいてたかひに證文とりわたし、一はうのふミうするのときハ、一はうの一せうもんをもつて、年記のかきりを相すます事ハ、はうれゐなり、然に一はうのせうもんはかりにてうるのとき、かの證文うするのうへ、かいてハ本せんかへしのよし申、うりてハひら年記のよし申、さうろんの時は、せうにんまかせたるへし、もし又證人もなくハ、かいてのそんたるへきなり、もし以後して、證文見いたし候ハゝ、其もんこんにまかせ、・ちきやうをさたむへきなり、
まとめ
全部で171条あるのですが、1ヶ月くらいで終わると思います。
書いてある文字をそのまま読むと、主語が無かったり、話が変わったりで意味が通じないことが多く、思ったより苦戦している次第です。
のんびり作業します。その間に、他の分国法もぜひご覧ください。
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